dept24’s diary・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルスの目を通して、人間社会のウイルス感染症についてつぶやきます。

マスクをつけていても、会話でうつる又はうつされる可能性がある:

新型コロナウイルス感染は飛沫や接触だけではなくエアロゾル(マイクロ飛沫)感染ルートがあるので、”会話時間”や”密環境”に注意

 

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マスクをつけての会話も安心できない

ーー会話の時間が短いかどうか

ーー換気設備のある部屋かどうか

 新型コロナウイルスに感染する、感染させるのは、飛沫感染(対策はマスク)、接触感染(対策はアルコール消毒やこまめな手洗い)だけではなく、エアロゾル(マイクロ飛沫)感染(対策は「3密」=密閉・密集・密接を避ける)が大きい。このエアロゾル感染は世界保健機関(WHO)も重要視している感染ルートである。特に、「こまめな換気」や「CO2センサーで測定して、密の度合いを数値化し、窓を開けるなど密を避けることの必要性」が叫ばれている。

  人が話しているときは、いろいろなサイズの飛沫を飛ばしている(飛沫の量は個人差が大きく、量が多い人はスーパースプレッダーと呼ばれ、多くの人にうつす可能性が大きい)。会話をせずに、黙っていても呼吸はしているので、その呼気の中には多少のエアロゾルが含まれている。したがって、新型コロナウイルスに感染していた人は、多少のウイルス粒子を含むエアロゾルを放出していると考えられる。

 大きな飛沫は1~2メートル先くらいまでで落下するので、ある程度の距離をとって会話し、しかもマスクをつけていると、飛沫感染は避けることができる。しかし、小さな飛沫(エアロゾルとかマイクロ飛沫と呼ばれている)は落下しにくく、空気中に浮遊し、やがて乾燥状態になると、3時間前後のあいだはウイルスの感染性を維持することが科学的に確認されている。

 密閉状態の部屋(3密条件下)で会話していると、感染させられるウイルス粒子を含むエアロゾルの量がどんどん多くなる。会話している人数や会話している時間、また会話している部屋の大きさにもよるが、エアロゾルの密度が高くなると、「うつしやすい状況」とともに「うつされやすい状況」の中にいるとの自覚が大事と考えられる。

 

この”3密”の状態を解決方法がある。

 どの程度の”密状態”になっているのかを、ある程度数値化できる装置がある。CO2センサー(二酸化炭素の測定器)と呼ばれているもので、人が吐く息(呼気)の中にはCO2(二酸化炭素)が含まれているので、この量を測定して数値化(ppmで示す)すると、人が吐いた呼気の密度が判かることになる。

 会話している人の数が多いほど、倍々と増えていくので早く高い値になる。

以下は、密状態を知る目安である。

ー1000ppm以下(良好な状態:屋外は400ppm)

ー1000~1500ppm(そろそろ換気の準備を)

ー1500~2000ppm(換気を)

ー2000ppm以上(すぐに、強く換気を)

 

 1000ppmレベルを維持できれば、会話している、あるいは黙っているにかかわらず、その人数にかかわらず、また部屋の大きさにかかわらず、感染した人が周辺の人にうつしたり、感染していない人が感染した人からうつされたりする可能性は低いと考えられる。この状態を維持するためには、1000ppm以上の数値になれば、換気をする(同時に、対角線上の窓やドアを開けて、換気扇をつけると効果的)ことが必要になる。ただ、部屋の構造や窓の位置・換気扇の位置などによって、換気の状況が変わってくるので、CO2センサーを部屋の各場所において、最も密になりやすいところにCO2センサーを設置したうえで対応することが重要である。

 オフィス、自宅、飲食店、デパート、博物館、美術館、パチンコ店、そのほか人が集まる至るところ、同じ状況と考えられる。接触感染と飛沫感染がほぼ解決済み(消毒・手洗いとマスクのユニバーサル化)の日本では、このエアロゾルへの対策が大きな決定打となる対策と思うのだが。