dept24’s diary・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルスの目を通して、人間社会のウイルス感染症についてつぶやきます。

オリンピックを終えて

 オリンピックがようやく終わった。私たち一般人は、「自宅でおとなしく、テレビでオリンピックを観戦すること」、一方、参加する選手や関係者は「できる限りの簡略版の規制」で乗り切った。このダブルスタンダードに対して、多くの批判が相次いだ。「無観客のはずなのに、競技場で観戦している人たちがいるのはなぜ?この人たちは何者?」と思った人は多いのではないか。また、マラソンを筆頭に、ほとんどの屋外の競技では、それらが見物できる場所に大勢の人が集まっている様子がテレビに映っていた。いくら屋外といえども、人と人との間がほぼ無い状態で、応援の掛け声をあちこちでかけている様子が伺えた。

 

 オリンピックの期間は17日間であった。新型コロナウイルス感染後の潜伏期は平均で10日前後と言われているので、オリンピックが始まってから、新型コロナウイルスに感染した人はすでに発症し、回復に向かっている人もいるだろうが、今後まだまだ感染者が増え続けることが予想される。オリンピック期間中、政府はいわゆる「まん防」でやり過ごすつもりだったのだろう。「緊急事態宣言を出すような状況になれば直ちにオリンピックは中止します」と言って開催に突き進んだのであるが、予想に反して感染者数が増え続ける状況になりオリンピック開催を前に、東京はもちろん首都圏3県、大阪、沖縄に緊急事態宣言を発出せざるを得ない状況となった。これも、いつも通りの「想定外」ですまされてしまった。

 

 今後、東京など首都圏の医療体制のひっ迫が気になるところである。確かに、高齢者を優先してワクチン接種を進めたおかげで、新型コロナで亡くなる人が予想以上に減っている。しかし、働き盛りの40代、50代の人たちの重症化が以前に比べると多くみられている。東京は、今後、重症患者の受け入れが可能かどうかが心配である。

 

 大阪では、第4波の際には、感染者数に対して亡くなる人の数が尋常ではなかった。人口当たり死者数は驚くことに、インドの1.5倍という報道であった。また、入院できずに自宅で死亡した人は18人にもおよんでいた。毎日新聞の調査では第4波の3月1日~5月21日までの死者は、10万人あたり大阪が11.0人で、東京の4.6人の2倍以上であった。大阪のメディアはこの点をもっと重視し、行政側に改善を求めるべきであった。

 

 

新型コロナが収まると、次に現れる感染症は?

 2020東京オリパラがまもなく始まる。新型コロナの感染状況は収まるどころか、第5波が本格化しそうな勢いである。しかし、高齢者の多くはすでにワクチン接種をすませ、感染者数は増えているが、死亡者数は減っている。働き盛りの人たちが、変異株に感染したことによるのか、重症化しているとの報道も多いのが気になるが、この世代の人たちも、まもなくワクチン接種を受けられるだろう。

 

 このように、今のところ、ワクチン接種を各世代に行きわたらせることで、感染者数を減らし(このワクチンで感染を完全に遮断することはできなさそうである)、しかも重症化例も減らせることが期待できる。

 

 新型コロナウイルス感染症が、近い将来、大きな問題にならないような状況になるのだろうか?実際、そのような世の中になると、次にはどんな感染症が顔を出すと考えられるのか。そのような状況になっても、手洗いやマスクを、少なくとも日本ではかなりの人が励行し続けるのではないだろうか。そうなれば、インフルエンザもノロも顔を出しにくい状況であろう。

 

 では、大きな感染症は当分なくなるのであろうか。ここで、世界保健機関(WHO)は警鐘を鳴らしている。どこかで顔を出そうかと、状況を伺っている感染症として「麻しん(はしか)」を挙げている。麻しんは空気感染で広がっていく典型的なウイルス感染症で、世界的にも、なかなか根絶が難しい感染症である。新型コロナウイルスも「エアロゾル」、すなわち空気感染に近い伝播ルートがあると言われているが、麻しんほどではない。しかし、麻しんには非常に効果的なワクチン(弱毒性の生ワクチン)が存在する。2回のワクチン接種をしていればまず感染しない。ワクチンが開発されてから数十年も経っているが、その有効性はほぼ変わらず、新型コロナウイルスのように、変異株には効きが悪い、といった懸念がない。2015年、WHOの西太平洋地域事務局から「日本は排除状態にある」と認定された。これは日本の土着型の麻しんウイルスによる麻しん感染が、36ヶ月以上にわたって阻止されていることが認められたことによる。しかし、実際には、今なお麻しん流行国からの輸入感染症として、持ち込まれ、もしくは持ち帰られたウイルスによって、数年ごとに大流行している(直近では2019年の744例、図参照;その前は2008年の11,005例)。この流行を引き起こしているのは、2回のワクチン接種を行っていない人たちである。感染者の多くは、ワクチン接種を受けたかどうか覚えていない、1回しか受けていない、まったく受けていないなどの人たちである。

f:id:dept24:20210720083738p:plain

麻しんの患者数(2014年-2021年7月7日)

 国立感染症研究所が発表している感染症発生動向調査によれば、図に示すように、新型コロナが発生した2020年は13例で、本年は2例である。近い将来、新型コロナが大きな問題ではない状況になると、経済活動が優先されるだろうから、海外へ、そして海外から訪問する人たちが急激に増えることが考えられる。そうなると、容易に麻しんウイルスが日本に上陸し、免疫が不十分な人たちの間で広がっていくことが想像できる。

 

 特に、新型コロナが発生して以来、小児の麻しんワクチン接種率が低下しているようである。懸念されるのは、麻しんには有効な抗ウイルス薬が開発されておらず、小児が麻しんに感染すると死に至ることもある。感染した人と接触した場合(濃厚接触者)、接触後3日以内であれば直ちにワクチン接種することが勧められている。3日が過ぎてしまっても、接触後4日~6日までであれば、発症を予防できる可能性があるとして、献血血液から製造されたイムノグロブリン製剤を投与することが勧められている。

抗体カクテルが第4の新型コロナ治療薬として認定された(2021年7月19日)

 抗体は、ウイルスに感染したり、ワクチン接種したりで、からだに作られる免疫反応のひとつである。特に、ウイルスが細胞に感染するのを遮断する抗体を中和抗体という。ワクチン接種の目的のひとつが、この中和抗体をあげることである。

 

 現在、日本で進行中の新型コロナワクチンは、新型コロナウイルス粒子の外側にあるスパイクたんぱく質を作るための核酸(mRNA)を、脂質で包み込みナノ粒子化したものである。このスパイクたんぱく質は、喉や肺やそのほか多くの臓器に分布している細胞の表面に発現している受容体(レセプター)であるACE2に結合する性質がある。この結合は、感染の最初のステップになる。

 

 この結合を遮断できる中和抗体は、このスパイクたんぱく質のACE2との結合場所を認識した抗体である。それぞれ、少し認識場所が異なるが、同じく中和抗体としての活性を持つ2つの抗体を混ぜた抗体カクテルが、昨日の厚生労働省の国内での製造販売について審議する部会で特例承認された。これは、トランプ大統領に投与され、投与後数日で劇的な回復に導いた抗体カクテルである。

 

 実際、現在進行中のワクチン接種は、中和抗体を上げるためであるが、これは1回目の接種から3~4週間後に2回目の接種を行い、その後3週間ほど経ってようやくこの有効な中和抗体があがってくる。しかし、この抗体カクテルを点滴で投与すると、直ちにワクチン接種後の有効な状態とほぼ同じ状態にすることが可能である。したがって、抗体があがりにくい人にも有効なものになる。

 

 この抗体カクテルは、ウイルスの感染を遮断する活性があるものなので、軽症もしくは中等症の感染者を対象にした治療薬で、すでに重症化した患者は、ウイルスが増える時期は過ぎてしまっているので、対象外である。軽症もしくは中等症の感染者が投与されると、その後に入院もしくは死亡するリスクを70%低下させると、海外で実施された治験の結果が示している。日本では、その安全性を確認する第1相治験が行われて特例承認に至っている。

 

 このように劇的な効果があり、エスケイプ変異株も産生されないカクテル療法とは、HIV/ エイズの治療で発見された方法である。変異しやすいウイルスでも、変異できる頻度があり、複数の薬剤で異なる場所を攻撃された場合には、その2ヵ所を同時にエスケイプできる変異株は作れないということで、さすがのHIVも降参状態になり、今ではこのカクテル療法(多剤併用療法ともいう)により、感染者の日常生活には、ほぼ支障がない状態を維持できるようになっている。

 

 今回承認された新型コロナに対する抗体カクテル療法も、副作用が少ない、変異株が出にくい、ウイルス量の低下に有効など、良いことづくめであるが、問題はかなり高価な薬剤になると思われる点である。

 

新型コロナへの対応について思うこと!

・変異株への対策は特別なものがあるわけではなく、これまで通りである。すなわち、飛沫対策としてマスクの着用;接触感染の対策としてこまめな手洗い;それにエアロゾル感染対策として、こまめな換気である。従来の新型コロナウイルスと、さまざまな変異株との違いについては、主として、ウイルスがからだに入ってきた後の、感染のしやすさや感染した後の症状が重くなるのかどうかについて議論されている。したがって、からだに入らないように、どう防ぐかは、変異株であっても従来の新型コロナウイルスと同じ対策である。

 

・マスクを着けるかどうかについては、それぞれの状況で異なるので、もっと考えながらの対応が重要である。どこでも、常にマスクを着けることが良いことだと思っている人が多すぎる。しかし、これからの季節は、マスクを着けることで、熱中症のリスクが大きくなる。そもそも、マスクは飛沫感染対策が主な目的である。実際、マスクをつけることにより、インフルエンザはほとんどなくなってしまった。しかし、新型コロナは思ったほどの効果はなく、増え続けている。この点を考えれば、新型コロナウイルスがどのようにしてうつっているのか?明らかに、「マスクを着ければOK」という単純なものでもない。おそらく、感染した人が吐く呼気を通して感染していると考えられる(小さな飛沫も少しは止めるようであるが)。咳やくしゃみをしなくても、またマスクをしていても、屋内の密閉された場所で、数時間、何人か一緒にいて、その中に感染した人がいる場合などである。したがって、逆に、屋外などで、人と1~2メートル以上離れている場合には、マスクは不要である(大きな声でおしゃべりをしている人たちの近くにいるのは避けるのは勿論である)。飲食店なども、換気対策が徹底していれば(CO2センサーをおいて、CO2濃度が700~1000ppm以下を維持できる程度の対策)、少し離れて座り、静かに話しながら食事を楽しむことでうつるとも思えない。お酒を飲んでも、大声でなく、普通に会話ができるかどうかが問題である。実際には、「お酒」ばかりが注目され(というか、注目させられ)、この「CO2濃度(換気)」に目が、行政側にもメディア側にも、向けられていないことが、大変重要な問題である。

 

・日本は、PCR検査数が足りていないことが、感染が広がっている原因になっていると思っている人が多い。特に、無症状者とか、潜伏期の発症前数日の人たちへの対応としてPCR検査が必要との意見である。専門家と言われる人たちの中にも、こう主張する人が多い。これは、PCR検査をして、陽性者を隔離することで、感染拡大を抑えられるとの考えからきている。ある都市やある地域の人たち全員を一斉に検査し(中国などは1週間で1000万近い人を一斉に検査をしていた模様)、陽性者全員を隔離する場合に当てはまる。しかし、実際には都市や地域のごく一部の人たちを(今では、多額の予算を使って数万人まで増えてきているが、全人口から考えればごく一部)、毎日検査し、陰性だった人は元の一般の集団に戻り、また感染するかもしれない状況になるのであれば、いくら毎日このPCR検査を繰り返しても、効果が出にくいことは明らかである。実際、多くの諸外国の検査数は、日本の比ではないが、陽性者数は増え続けている。患者も増えている。PCR検査数を増やしても、簡単に解決できる問題ではないことは明らかである。

 

・メディアや行政サイドは、毎日のPCR検査陽性者数と死亡者数を発表しているが、一般の人たちは、この報告を期待しているのだろうか?PCR検査陽性者数は、あくまで検査をした人たちの中の陽性例であって、これがすべての陽性者ではない。検査数が増えれば陽性者数も増えるのは当然である。この数字が意味するものは、ほとんどないと考えられる。一方、死亡者に関してはどういう経緯で亡くなったのかについて、詳細に報告する必要があると考えられる。この死亡例では、都市や地域によって、その対応が大きく異なっているようである。特に、大阪では、人口の多い東京よりも死亡例が多い日が続いた。PCR検査での陽性者数は、東京よりも少ないにもかかわらずである。皆さんはどう思われるのか?

 

ウイルスの眼から見た、日本の新型コロナ対策

久しぶりに、ウイルスの眼から見た、われわれの仲間、新型コロナウイルスが入り込んだ人間社会での騒ぎについての感想を述べたい。

 

ウイルスとは、繰り返し述べているが、頭脳を持っておらず、また足も持っていない。しかも、ヒトの手を借りなければ(もちろん、いろいろな動物に取り付くウイルスは、それぞれの動物の手を借りる必要がある)、自分の子孫すら作れない。

 

新型コロナウイルスも例外ではなく、ヒト、特にその呼吸器系(喉や肺など)に入り込み、場合によっては全身に広がり子孫ウイルスを生産してもらっている。もちろん、その増え方はウイルス自身がコントロールしているはずもなく、増やしてくれているヒトの年齢とか体調(基礎疾患を患っているかどうか)などで変わってくる。症状がなくても増やしてくれるヒトもいる。したがって、ウイルスが増え、からだの外に排出することによって、また次の、増やしてくれるヒトにうつっていく。このようにしてだんだんと広がっているのが現状である。

 

人間社会では、若者が批判の対象になることが多いように思う。というのは、若者は基本的に体力があるので、感染してもほとんど症状がなく、元気に毎日動き回るので、広げやすいからである。初期のころはパチンコ店やカラオケ店、それにライブハウスなどが、また最近では飲食店とお酒がキーワードで、盛んにここで感染者が多数発生しているとの風潮が作られている。

 

そもそもウイルスは、人間にされるがままに増え、吐き出され、次の人にうつっていく。うつりやすい行動や感染の広がりをブロックする手段も人間の行動次第である。

 

最近では、新型コロナ対策の効果がないのは、今までの何倍もの感染力を持った変異株が現れたせいで、感染対策の間違いではないと言わんばかりである。テレビをはじめとして、ほとんどのメディアが、新型コロナウイルスの変異株が次々に現れ、それがいかに狂暴かの説明(言い訳)に終始している。

 

しかし、どんな変異株であっても、基本的な対策は同じである(マスクの着用・手洗い・3密の回避)。欧米諸国がいくらPCR検査数を増やそうが、ロックダウンを行おうがなかなか効果が上がらなかった。ところが、何をおいても、ワクチン接種を早急に、またダイナミックに進めることに躍起になったおかげで、顕著に効果が表れてきた。このワクチン接種は昨年末から始められていた。

 

われわれウイルス側からすれば、日本でもこの状況を見ていただろうし、まして1年遅れのオリンピック/パラリンピック開催を目指していたので、直ちに最優先で、猫の手も借りながらワクチン接種を進めるだろう、しかも若者が感染拡大の中心メンバーと思っているなら、まずそのグループから徹底的に接種していくのだろうと思っていた。そうすれば、早々に退散するしかないだろうなと思っていた。

 

ところが、である。日本の行政機関はじめ、専門家委員会も、われわれウイルスに対して大変優しい存在である。まさか、ここまでワクチン接種が遅れに遅れるとは思わなかった。しかも、医療従事者の次に、65歳以上の高齢者層からワクチン接種を始めている。64歳以下は、ようやくスタートである。少なくとも、まだ数か月はかかるであろう。これでは、近いうちにワクチン接種の恩恵を受けることはできないのではないだろうか(いやいや、我々にとっては大変ありがたい愚策であるが)。

 

 

 

 

新型コロナウイルスの感染の広がり方は、今や「感染経路不明=空気感染/エアロゾル感染」ではないか?

 新型コロナウイルス感染の広がりがなかなか衰えない。このウイルスが出現し、初めのころは「人から人にはうつらない」、と中国当局もWHOも言っていた。しかし、家族内で新たな感染者が発生するなど、人から人にうつることがはっきりし、これが世界共通の認識となった。しかも、インフルエンザウイルスよりも広がりやすい。

 

 昨年の早い時期からこまめな手洗い(接触感染防止のため)とマスクの装着(飛沫感染防止のため)が厚生労働省はじめ、それぞれの自治体でもホームページ等で啓発している。

 

 この啓発のおかげで、インフルエンザやその他の感染症の患者数は軒並み激減するという、極端な現象を引き起こしている。ところが、驚くことに、新型コロナウイルス対策として、手洗いやマスクをしているにもかかわらず、コロナの感染者数は、新たな波が押し寄せるごとに大きな波になってきている。

 

 実は、ウイルスが感染する様式には前述の2つだけでなく、もう1つ空気感染がある。麻しん(はしか)や水痘(水ぼうそう)のウイルスがこの様式でうつると言われている。ウイルスではなく細菌であるが、結核菌もこの様式でうつると言われている。事実、以上の3つの病原体が空気感染するものと、教科書には載っている。

 

 空気感染とは、たとえば過去(昭和の時代にワクチン定期接種が進められる以前の時代)には、麻しん患者が学校の教室に1人いると、教室内のほとんどが感染するようなケースがあった。すなわち、閉め切った教室内で、感染者が吐き出したごく小さな飛沫に包まれて存在していたウイルスが簡単には落下せずに、空気中に漂い、そのうち乾燥状態(飛沫核)になっても感染する力を維持しており、それを吸い込むことにより、同じ教室内の生徒にうつる。このように、くしゃみや咳をしなくても、感染者が呼吸で吐き出したウイルスが、周囲だけではなく、教室内の離れた席の生徒にも、呼吸する際に吸い込んで感染するケースがあった。

 

 さて、新型コロナもこの空気感染に近いことが起こるのではないかと言われている。マイクロ飛沫とかエアロゾルを介する感染と呼ばれているもので、大きな飛沫のように、感染者が吐き出したすぐそばに落下せずに、小さい飛沫は空気中に浮遊し、なかに包まれているウイルスの感染性は3時間も残していることに基づいている。もちろん、ウイルスの感染性は浮遊している間に徐々に低くなり、3時間が経過するとほぼなくなるということである。したがって、「3時間、ずっと同じ程度に感染する力を維持して、遠くの人が吸い込むとうつってしまう」というわけではない。

 

 この新型コロナウイルスの空気感染については、麻しんウイルスほどの効率ではないと思われるが、どの記事も微妙な表現で、あいまいな感じがする。しかし、WHOは昨年の初めごろは空気感染とかエアロゾル感染は積極的には認めていなかったが、その後、注意すべき感染経路と位置付けるように、変わってきている。ところが、日本の場合は、まだまだこの空気感染/エアロゾル感染については積極的に啓発しているとは感じられない。

 

 「3密を避ける」は、すなわちこの空気感染/エアロゾル感染対策としてだと思われる。しかし、「3密」=「密閉・密集・密接」を避けるようにと言われても、ピンと来ている人は多くなさそうである。明確に、「密室で、ヒトの呼気の濃度が高くならないように、CO2センサーで測りながら、換気対策もしくは空調設備で、何分かごとに窓を開けるとか部屋の空気が入れ替わる対策がとれるようにしましょう」とは言っていない。実際、空気感染/エアロゾル感染対策が不十分なままで、いつまでも感染経路不明が70%で感染者が減らず、徹底した対策になっていないというのが現実ではないかと思われる。

 

ワクチンの有効率がよく分からない

f:id:dept24:20210619154524j:plain

ワクチンの有効率とは


 新型コロナワクチンの接種が進んでいる。各自治体によって違いがあるが、65歳以上の高齢者にとっては、何が何でも、人より先に打って貰うぞ、という意気込みを感じる。しかし、国が悪いのか、地方の自治体が悪いのか、まず接種券なるものが郵送されてくる、使ったこともないパソコンやラインで申し込む、電話する、かかりつけ医に申し込む、などどれを取ってもスムーズに進まない。子供たち、さらには孫までも動員して、なんとか早くに接種予約を完了し、やっとの思いで接種にこぎつけた人が、ちらほら見えてきたところである。

 昨年の段階では、まだ余裕があったのか、自分は慎重派なのでそう簡単にワクチンを接種したりしないぞ、との思いでいた人が多かったと思うが、ここに来て、高齢者はまるで戦いのごとく、必死の形相で予約する気持ちになった人が増えている。あの時に、「今までヒトに打ったこともないワクチンなんて、絶対打ちたくない」、「治験で大した副作用がなかったといっても、治験の間だけのことで、長期的な安全性がまだ全然わかってないものなので、私は様子見です」と言っていた人たちの多くが、ワクチンを接種したいと考えが変わったようである。

 この変化は、恐らくこのmRNAワクチン(現在、高齢者に接種されている新型コロナワクチンは2社由来で、どちらもこのタイプ)とやらは、とてつもなく有効率が高かったそうだ、という点が理由と思われる。インフルエンザワクチンに比べると倍ぐらい高い数字である。

 図に示したように、ファイザー社製ワクチンの有効率は95%、モデルナ社製ワクチンの有効率は94.5%と報告されている。この値は、それぞれ43,000人(12歳以上が参加;56-85歳が40%以上)、30,000人(18歳以上が参加;65歳以上が7,000人=23%)の人を対象に第3相試験を行って、明らかになった数字である。前者は3週後に、後者は4週後に2回目の接種をする条件で得られた。

 第3相試験は、ファイザー社製ワクチンでは米国39州、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカ、ドイツを含め世界中の154施設で実施された。一方のモデルナ社製ワクチンでは米国30州、およびワシントンDCの89地域で実施された。

 その結果、図の下段に示した通り、ファイザー社製ワクチンでは新型コロナを発症した人数が、ワクチンを接種していない人のグループでは162人、ワクチンを接種していた人のグループでは8人であった。モデルナ社製ワクチンでは、ワクチンを接種していない人のグループでは90人、ワクチンを接種していた人のグループでは5人であった。

 そこで、ファイザー社製ワクチンは162人と8人であることから、その差の154人分(=95%)を抑えたことになる。モデルナ社製ワクチンは、90人と5人なので、85人分(=94.5%)を抑えたことになる。

 

 以上、このような経緯から95%と94.5%という数字が世に出ているわけである。したがって、日本とは条件も実施された地域も大きく異なる状況下で得られた結果である。

 ただ、非常にわかりにくいのであるが、現在ワクチンを接種しようとされている皆さんは、「このワクチンを接種しておくと、95%の確率でもう大丈夫なんだ」と理解されている人が多いのではないだろうか。しかし、以上の背景を考えると、そもそも発症する人はごく一部である、その少ない中(第3相試験が実施された地域に比べると、日本の場合にはさらに少ないと思われる)で、さらに少なくなる率(=有効率)がこのパーセントなので、なかなか実感として伝わってこないと思われる。