dept24’s diary・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルスの目を通して、人間社会のウイルス感染症についてつぶやきます。

次回の第3回かんさい感染症セミナーのご案内です

次回のセミナーは大阪梅田で、2024/2/22の13:30~16:00です。


次回は、2月22日(木曜)13:30~16:00、大阪梅田(大阪駅前第二ビル5階の梅田総合生涯学習センター第二研修室)です。

話題の感染症として、「マダニ媒介感染症」、「食中毒」、「インフルエンザ」についてです。

感染症の専門家が、平易な言葉でわかりやすく、丁寧に説明します。感染症に対する対応が的確になります。

 

参加登録は、NPO法人関西BS交流会(BSはbiosafety)の新しくなったホームページ(kansaibsweb.com)から、もしくはe-メール(office@kansaibsweb.com; kansai.biosafety@gmail.com)、もしくは電話(070-2227-8791)からできます。

よろしくお願いします。

 

皆様、奮ってご参加ください。

 

(「かんさい感染症セミナー」は4カ月ごとに、関西のいろいろなところで開催していく予定です)

 

第2回かんさい感染症セミナーを終えて

8月26日に、第2回かんさい感染症セミナーを、東大阪市布施駅前市民プラザ・多目的ホールで無事終えることができた。本セミナーは、一般の方々を対象に、「感染症についてやさしく解説、正しく理解」をモットーに開催している。

 

来場者数は31名で、そのうちの25名の方からアンケートを回収できたので、その内容を集計し、一部を紹介したい。

 

・すべて分かりやすく理解しやすかった。

・非常にためになるセミナーだと思った。

・興味深いお話を伺えて家庭、会社で実行していきたい。

・早速使える情報もあり、今日から改善したい。

・とても分かりやすく説明していただき、お手本にしたい所もあり参考になった。

・食中毒からウイルスまで幅広く知識を得られて面白いセミナーだった。

・BS交流会ということで、専門家が聞かないと難しい内容かと思っていましたが、一般の方が聴講しても非常にためになるセミナーだと思った。

・30分というのは集中力の持続で考えると良い配分だった。

・オンラインでも行ってほしい。

・スライドの文字が見えにくかった。

・もっと簡単な内容だと良いと感じた。

・テーマ別で時間配分が短すぎる感じだった。

 

一般の方を対象にしたセミナーは、わかりやすく話すことに不慣れな面が多いので心配してたが、以上のように、かなり高い評価をいただいた。今後も、同様の趣旨で関西地区のいろんなところでセミナーを開催していく予定である。

 

次回は、2024年2月、大阪市(おそらく梅田)での開催を予定している。

新型コロナの対策には『屋内の換気』に優るものなし

新型コロナの出現以来、社会の至るところでマスク着用が一般的なマナーになった。
世界的にはすでに、マスクをしている人がほぼいない国が多い。日本も遅ればせながら、国としては「マスク着用の是非を管理しないので各自で判断してください」と。しかし、その判断の基準についての説明がないことで、しておいた方が無難と考える人が多いようである。また、マスク着用も、良いことばかりではなく、酸素不足•二酸化炭素過多の弊害のあることの説明も積極的ではない。


1)屋外では、マスクはほぼ不要
2)屋内では、マスクより、CO2センサーで二酸化炭素の濃度を確認しながら、1,500ppmを越える場合は換気することが優先(1,000ppm以下が望ましい)
3)新型コロナの場合、アルコール消毒や手洗いが優先されることはなさそう
4)換気されていない室内では、そこにいる人数と滞在時間に比例して二酸化炭素の濃度が高くなるので、定期的に換気することが大事

ひとりで運転している車の中でマスクの人を見かけるが、えっ、なんで?

マスクをいまだに多くの人がつけたままである。それも、屋外の青空の下で、それから1人で運転している車の中で、えっ、なんでマスクするの?

 

新型コロナを2類から5類にうつすにあたって、マスクをするかどうかは、状況に応じて、自分の判断で、つまり 「正しく考えて判断してください」 ということだったと記憶している。高齢者施設や医療施設などではマスク着用、屋外では基本不要。しかし、屋外でも、接近した状態で、しかも長い時間一緒にいて話し込む場合は必要である。

 

問題は、特に日本の場合は、多くの人が全く正しい思考ができていない点である。いわゆる専門家がその判断するための考え方について、ていねいに、わかりやすい表現で伝えていないことに依っている?

 

ウイルスの感染は、そんなに簡単には成立しない。

 

ある程度の塊となったウイルス粒子が感染するには、喉や鼻の粘膜上に存在するウイルス受容体(レセプター;ウイルスが結合して感染の最初のとっかかりをつけるところ)を目掛けてアタック、そして結合し、そのレセプターを通して、細胞の中にウイルス粒子を押し込む必要がある。その際のウイルス量も、一説では10の6ないし7乗個、つまり10万個とか100万個も必要であるとか。このように、ウイルス粒子にとって感染を成立させるのは、かなりハードルが高そうに思える。そう簡単には感染は成立しないと考えられる。感染した人が吐いた息は、屋外でも、いつまでもウイルス粒子をたくさん含んだ塊のまま浮いていて(実際には、屋外ではすぐ広がってしまうが)、近くにいる人の口や鼻から入って、感染してしまうというイメージの人が多いのでは?

 

実際には、空気中のウイルスからの感染が成立するのは、締め切った部屋で、感染した人がかなりの時間、息を吐き続けて、相当なウイルス量になってくると、同じ空間にいる感染していない人は、その空気中の、ウイルスを含む小さな粒子を介して感染する可能性が高くなる。そのような状況では、一緒にいる時間にもよるが、感染しないための手段としてマスクが役に立つとは思えない。したがって、部屋の中で感染を防ぐのは換気が一番大事である。

 

さらに、日本ではしきりに、手洗いと共にアルコール消毒が大事であると言いまくっていた。しかし、机やドアノブ、また電車のつり革などを、一番感度の高いPCRという方法で検査しても、どこをとっても陽性と出るような結果はほぼなかったのではないか。したがって、学校や公共の場で先生や職員が備品をアルコール消毒したり、手洗いや消毒に皆がかけた膨大な時間はあまり成果を上げたとは言い難い。さらにいうと、いまだに過剰にアルコール消毒しているあなた、肌が荒れるだけですよ、と言いたい。

次回(8月26日(土曜))の感染症セミナーの案内です。

「かんさい感染症セミナー」は4カ月ごとに、関西のいろいろなところで開催していく予定です。

 

次回は、8月26日(土曜)13:00~15:00、東大阪市の布施駅前プラザの予定です。

話題の感染症として、「アニサキス」、「麻しん(はしか)」、そして気になる「空間の病原体に対する安全対策」についてです。

 

皆様、奮ってご参加ください。

 

 

 

感染症のセミナー開催の報告です

関西BS(バイオセイフティ―)交流会とBMSA(バイオメディカルサイエンス研究会)が共同で、話題の感染症について、正しく理解し、どうすれば予防できるのか、もし感染してしまったらどうすればいいのか、などについて、できるだけわかりやすく解説する一般の方を対象としたセミナーを開催しました。

 

感染症は「新型コロナ」だけではありません。

 

次々といつこの地球上に顔を出そうかと、したたかに待ち構えている、コロナ後の感染症が列をなしています。今のうちに正しい知識を身につけ、正しい対処法を実行しましょう。

 

第1回かんさい感染セミナー:2023年4月1日(大阪市難波の大阪公立大学I-siteなんばで開催されました。多くの方が参加してくださいました。

 

 

その時の様子をユーチューブにまとめました。いつでも学習に役立てることができるように、次にそのリンク先を貼っておきます。

 

講演1:掛屋先生 https://youtu.be/vCWvdDsDcFc

講演2:浅田先生 https://youtu.be/Ywe3TmuWcMM

講演3:中屋先生 https://youtu.be/FdIELoraXFE

講演4:改田先生 https://youtu.be/CgjqYsGIQiQ

新型コロナの制限解除で気をつけたい感染症としての麻しん(はしか)

麻しんの原因となるウイルスが流行している国からの輸入をきっかけとして、数年ごとに日本のあちこちで麻しんの集団感染が起こることを繰り返してきている。最近では、2018年3月に沖縄県に外国人観光客が入国し、その後に発症したにもかかわらず3日間にわたって県内を観光し、不特定多数の人と接触したため、沖縄県ばかりか、東京都、神奈川県、それに愛知県にも飛び火をして麻しんの大流行となった。

 

麻しんには治療薬がないので、2回の生ワクチンを接種しておくことが重要である。沖縄で麻しん患者となった人たちはワクチン接種歴のない人が多かった(麻しんは小児の感染症との認識は昔の話で、今では感染歴がなく、ワクチン接種歴もない大人の患者が多い。大人が感染すると、小児よりも重症化しやすい)。

 

わが国では、麻しんは、風しんと一緒に混合ワクチン(麻しんMeaslesと風しんRubellaの頭文字をとってMRと呼ばれる)として定期接種されている。

 

しかし、平成元年に導入された麻しん・風しん・おたふく風邪(Mumps・MMR)ワクチンの定期接種株に副反応(無菌性髄膜炎)が多発したことから平成5年に中断され、現在も、一定の世代にワクチン未接種者が多く存在していることは知られている。

 

さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響から、世界の少なくとも41か国で2020年、2021年に実施予定であったワクチン接種キャンペーンが中止されている。わが国においても小児への定期接種率は、COVID-19発生以降は低下している。

 

新型コロナウイルスについて、わが国では手洗いや消毒、そしてマスクを着けることが重要とした対策ばかりであったが、最近になってやっと換気の重要性が加わってきた。2020年の途中から、エアロゾル感染があることが言われていたが、日本ではその対策としての換気がほとんど浸透していなかったように思われる。

 

麻しんは空気感染する代表的な感染症であり、新型コロナよりもはるかに周辺の人にうつしやすい、またうつされやすいことから、マスクや手洗い、それに消毒では対応しきれない。換気をすることも重要ではあるが、最も重要なことは2回のワクチン接種を徹底することである。

 

新型コロナでは、ワクチンを接種していても、時間経過とともに、大切な抗体が役に立たないレベルまで低下すること、それは特に高齢者において顕著であることが繰り返しテレビ等で放送されている。これまで、ワクチン接種後にどの程度抗体が上昇し、どの程度その活性が持続しているのか、あまり重要視されてこなかったが、麻しんに対する抗体も意外に低下しているかもしれない。海外から日本人の持ち帰り、訪日外国人の持ち込みに端を発して、次々とうつっていき、日本のあちこちで集団感染を起こす張本人にならないためにも抗体価を事前にチェックしておくことが大切ではないだろうか。