dept24’s diary・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルスの目を通して、人間社会のウイルス感染症についてつぶやきます。

われわれウイルスの眼から見ると 2020年の始めから「三密を避ける」という標語がどこに行ってしまったのかと思う

 われわれ新型コロナウイルスが、子孫繁栄のためにどのようにして人間社会に入り込んできたか、人間に知られるようになってきた。

 まず、呼吸器に感染するインフルエンザと呼ばれているウイルスと同じように、「飛沫感染」である。確かにこれが主なうつり方だったが、今や、世界中の人々がマスクをしている(ユニバーサルマスクと言うらしい)。しかも、われわれが不織布のマスクが苦手なことまで知られてしまった。

 さらに、「接触感染」といわれるもので、感染したした人の咳やくしゃみで飛び散った飛沫が貼り付いていたところを、感染していない人が指で触って、眼、鼻、口の粘膜を触ることによってうつる様式もある。これは、インフルエンザウイルスやわれわれ新型コロナウイルスでもあるが、多くは下痢症を起こすノロウイルスなどが使う手段である。こちらも、小まめな手洗い・消毒を推奨され、われわれもやりにくくなってきた。

 この2種類のうつし方は、現状ではほぼ不可能になってきたけれど、実はわれわれ新型コロナウイルスにはもうひとつの秘策がある。そう、「エアロゾル感染」とか「マイクロ飛沫」感染といわれる第3の伝播様式である。

 世界保健機関(WHO)は最初このようなエアロゾル感染は無さそうといっていたのだが、昨年の早い時期に訂正し、エアロゾル感染があると断言している。このエアロゾルは、われわれ新型コロナウイルス粒子が、ごくごく小さな飛沫に包まれ守られている状態である。空気感染ほどではないけれど、飛沫感染よりも遠くに飛んでいける。しかも3時間くらい空中に浮遊する形で存在していても、感染できる能力を維持することができるのである。

 マスクと手洗い・消毒によってインフルエンザウイルスは大きな打撃を受け、インフルエンザの感染者数は昨年度の1/1000にまで減ってしまったらしい。逆に、われわれ新型コロナウイルスの感染者は、そんな人間の対応などどこ吹く風とばかりに増え続け、しかも感染経路不明とかに分けられる人たちが7割にも達しているらしい。この事実を考えると、飛沫や接触は、今では主なルートではなさそうと予想がつきそうだが、相変わらず飛沫と接触を避けるように国や専門家は呼びかけている。特に、マスクをはずす飲食の場でわれわれが感染していると思っているらしい。

 飲食店など、CO2センサーで密の程度を確認しながら、徹底した換気をされてしまうと、われわれは手も足も出なくなってしまうと思っているが、これは大きな声では言いたくない。

 行政機関で、飛沫と接触のうつり方にくわえて、エアロゾルという文言をいつの間にか追加しているところもあるが、具体的な説明がなく、相変わらず飛沫中心の対策を強要するばかりである。幸い、日本という国はワクチンの接種も信じがたいほどに遅れているらしい。この分なら、まだ当分われわれ新型コロナウイルスも子孫繁栄を続けられそうである。