dept24’s diary・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルスの目を通して、人間社会のウイルス感染症についてつぶやきます。

今朝の朝日新聞から:米国の感染症対策を担う米疾病探索センター(CDC)が新型コロナについて検討した意見として「手洗いは必要だが、清掃や消毒はあまり重要ではない」と

 街中で、誰か(ひょっとして新型コロナウイルスに感染した人?)の飛沫がついたドアノブやエスカレーターの手すりなどに触れた手で、目、鼻や口の粘膜に触れることで、新型コロナウイルスに感染するリスクがあるといわれ続けてきた。

 しかし、その接触感染リスクについて、米国のタフツ大学が、マサチューセッツの街中で、人々がよく触る場所にウイルスがついているのかを調べた結果、ほとんどウイルスは見つからなかったという。一番多かったのは、ごみ箱のふただったそうである。触ったものから手、そして口などの粘膜に触って本当に感染するのかについても解析しているが、ほとんどなかったそうである(推定値は100万分の2.2)。

 

 このように、接触感染のリスクはほとんどなさそうである。電車のつり革とか手すり、スーパーの買い物かご、エレベーターのボタン、エスカレーターの手すり、机など、あらゆるところで消毒されている風景が馴染みになっているが、どうもほとんど必要がなさそうな意見のようである。

 ただ、まったく接触感染がないわけではないので、1日1回ほどの清掃と消毒を実施すること、そして普段の手洗いは必要である。石鹸をつけ、20秒がめやす。

 

 ここからは私の意見である。日本では、飛沫感染のリスク(専門家の皆さんのご意見は、このリスクがほぼ100%かのよう)について、最も重要視した注意喚起が行われている。しかし、これだけユニバーサルマスクが徹底しているわが国においては、この飛沫感染もほとんど考えられないと、私は思っている。ただ、感染した人からは、喉や肺にウイルスがいる時期よりやや遅れて長期間、便にウイルスが排出されているという研究がある。したがって、トイレでは飛沫感染接触感染、両方のリスクがある。流すときはふたを閉め、便座はきれいに保つことが勧められる。

 

 このように、わが国では、接触感染と飛沫感染はそれほどのリスクはなさそうと考えていいのではないか。特に、エアロゾル対策として、換気の重要性についてはやや疎かになっていると考える。例えば飲食店や飲み屋街などでは、営業時間短縮の要請などよりも、徹底した換気対策(CO2センサーを用いて、密の数値化を行い)の必要性について、もっと啓発を行っていくべきではないだろうか。