dept24’s diary・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルスの目を通して、人間社会のウイルス感染症についてつぶやきます。

ひとりで運転している車の中でマスクの人を見かけるが、えっ、なんで?

マスクをいまだに多くの人がつけたままである。それも、屋外の青空の下で、それから1人で運転している車の中で、えっ、なんでマスクするの?

 

新型コロナを2類から5類にうつすにあたって、マスクをするかどうかは、状況に応じて、自分の判断で、つまり 「正しく考えて判断してください」 ということだったと記憶している。高齢者施設や医療施設などではマスク着用、屋外では基本不要。しかし、屋外でも、接近した状態で、しかも長い時間一緒にいて話し込む場合は必要である。

 

問題は、特に日本の場合は、多くの人が全く正しい思考ができていない点である。いわゆる専門家がその判断するための考え方について、ていねいに、わかりやすい表現で伝えていないことに依っている?

 

ウイルスの感染は、そんなに簡単には成立しない。

 

ある程度の塊となったウイルス粒子が感染するには、喉や鼻の粘膜上に存在するウイルス受容体(レセプター;ウイルスが結合して感染の最初のとっかかりをつけるところ)を目掛けてアタック、そして結合し、そのレセプターを通して、細胞の中にウイルス粒子を押し込む必要がある。その際のウイルス量も、一説では10の6ないし7乗個、つまり10万個とか100万個も必要であるとか。このように、ウイルス粒子にとって感染を成立させるのは、かなりハードルが高そうに思える。そう簡単には感染は成立しないと考えられる。感染した人が吐いた息は、屋外でも、いつまでもウイルス粒子をたくさん含んだ塊のまま浮いていて(実際には、屋外ではすぐ広がってしまうが)、近くにいる人の口や鼻から入って、感染してしまうというイメージの人が多いのでは?

 

実際には、空気中のウイルスからの感染が成立するのは、締め切った部屋で、感染した人がかなりの時間、息を吐き続けて、相当なウイルス量になってくると、同じ空間にいる感染していない人は、その空気中の、ウイルスを含む小さな粒子を介して感染する可能性が高くなる。そのような状況では、一緒にいる時間にもよるが、感染しないための手段としてマスクが役に立つとは思えない。したがって、部屋の中で感染を防ぐのは換気が一番大事である。

 

さらに、日本ではしきりに、手洗いと共にアルコール消毒が大事であると言いまくっていた。しかし、机やドアノブ、また電車のつり革などを、一番感度の高いPCRという方法で検査しても、どこをとっても陽性と出るような結果はほぼなかったのではないか。したがって、学校や公共の場で先生や職員が備品をアルコール消毒したり、手洗いや消毒に皆がかけた膨大な時間はあまり成果を上げたとは言い難い。さらにいうと、いまだに過剰にアルコール消毒しているあなた、肌が荒れるだけですよ、と言いたい。