dept24’s diary・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルスの目を通して、人間社会のウイルス感染症についてつぶやきます。

コロナ収束に伴い人の行き来が活発化することで懸念される感染症

中国・武漢で発生した新型コロナ(COVID-19)は、すでに3年以上もこの地球上で君臨し続け、感染症の中で独り勝ちしているような存在である。しかし、その原因となる新型コロナウイルスSARS-CoV-2)は、次々と変異を繰り返し、そのたび重症化するる能力が低下し、代わりに周囲の人にうつしやすい性質に変わってきている。もちろん、各国ごとでその扱いはさまざまであるが、マスクの装着率を見るだけでわかるように、世界の中でもわが国では、ウイルスの変異が繰り返され、その病原性が弱まろうとも、特別扱いを緩める状況を作ろうとしてはならないと思われている。

しかし、そうは言っても、皆さん生きるためにはいつまでも家にこもってばかりはいられない。生活のためには、経済を回し、給料をきっちりと受け取れるよう、社会を立て直す必要がある。ということで、海外との往来も徐々に活発化して、ビジネスで海外へ出かけることや、海外からの観光客の受け入れに対する制限の程度を下げようという動きになってきている。他の国では新型コロナ制限をとっくに取り払っている国が多い。

 

海外との行き来が活発化するとどうなるのか?感染症で次の懸念は何か、ということになると、それは「輸入感染症」である。輸入感染症とは、字のごとく、海外と行き来する日本人や外国人が、海外で流行している感染症を日本に持ち込む(輸入する)ことである。海外では、いろいろな(日本では流行していない)感染症が日常的に流行している国(日本では流行していない)が存在する。多くの感染症には、感染しても、発熱や発疹などの症状が出てくるまでの潜伏期がある。そのような潜伏期間中にも、周囲の人にうつす可能性がある。日本人が海外に出かけ、現地で感染し、潜伏状態で帰国し、空港の検疫所で問題なく素通りし、わが国に帰国後に発症し、医療機関を受診することがある。その際に、診察した医師がそれまでに経験のない珍しい感染症なら診断がつくまでに時間を要し、その間、早い診断を求める患者がいくつかの医療機関を受診し、それぞれの医療機関で多くの人に濃厚接触し、うつしてしまった後ということになる。海外からの入国者や旅行者においても、同じ状況が発生することがあり得る。

 

このような輸入感染症の厄介な点は、日本で長い間、流行ったことがない感染症であることが多いことである。日本人はきれい好きが多く、抗菌グッズが大好きである。そうなると長い間感染症を引き起こす原因となるウイルスや細菌などに触れることなく、過ごしている場合が多い。その結果、本来からだに備わっている、感染症に抵抗できる免疫を持ち合わせていない人が多くなってしまう。そこへ、海外から感染症の原因となる病原体が持ち込まれると、たちまち集団感染が起こり、人の移動とともに飛び火をして集団感染があちこちで引き起こされることになる。

 

次回からこのようないくつかの感染症について、紹介したい。