dept24’s diary・生田和良・大阪大学名誉教授

ウイルスの目を通して、人間社会のウイルス感染症についてつぶやきます。

われわれウイルスの眼から見ると:

欧米先進国を参考にすれば、新型コロナ対策にはワクチン接種を短期間に進めることが効果的であることは明らかであるが、日本はどうして早くしないのかな?

まあ、われわれウイルスからすれば、日本という国は子孫繁栄に協力的? 

 

 ワクチンの開発は、欧米先進国、中国、ロシアで、これまで人間には使われたことがない核酸ワクチンをはじめ、アデノウイルスを用いた運び屋ベクターワクチンが、超特急のスピードで進められ、すでに接種されている。

 

 通常、ワクチンは10~15年もかけて開発し、人に接種して、その有効性と安全性をきちんと調べる治験を実施、そして国の機関がその結果を精査したうえで承認されたものだけが世に出る。コロナウイルスが世界中を巻き込むパンデミック状態となり、一刻も早いワクチン開発が望まれていた。その点を十分理解していても、今回の新型コロナワクチンは、その開発を欧米の大企業があまりにも早く進めていそうな状況から、「私は絶対打たない」、「日本製のワクチンができるまで、待っている」などの声が多かった。

 

 しかし、イギリス株、ブラジル株、南アフリカ株、インド株など変異株が次々と発生し、それらの多くが感染しやすいとか、重症化しやすい、さらには変異株の中には30代や40代など、また基礎疾患を持たない若い健康な人まで重症化に追い込まれているなどの報道が連日なされている。これまで、自分たちには関係ないと考えていた若者たちも、さすがに「これは何とかしないと危ないな」と思い始めているようだ。

 

 新型コロナワクチンの治験結果について発表され始めた。「ワクチンの効果があるかどうかわからないから」とか、「短期的な副反応で重くはないが、長期的な副反応が心配」などの懸念から、これまでワクチン接種に迷っていた人が多かったが、治験結果を見て、半数以上の人が接種したほうが良さそうという思いに変わってきたようである。特に高齢者層が、「ワクチンをとにかく早く接種したい」という思いが強く、多くの自治体で予約が取れない混乱状態が続いている。

 

 日本の場合は日ごろから平和な国に暮らし、誰もかれもが好き放題言い、実際、誰も強力な指揮で世の中を動かそうとしないし、させない風潮が漂っている。こういう非常時に於いては、諸外国に比べると何事にも時間がかかり、ある方針が政府や行政側から示されると必ずと言っていいほど反対意見を述べる人たちが現れ、またそれをメディが大げさに煽るので、遅々として進まない。これが、今の日本のワクチン行政の手詰まり感を感じる所以であろう。

 

 それにしても日本は変わった国である。国の将来が危うい状況だと理解はしているとは思うのだが・・・。それでも自己主張の強すぎる人が多すぎるように思う。まあ、それが、われわれウイルスにとっての救いであって、子孫繁栄をさせてくれる、貴重な国になり続けてくれている。有難いことだ。